文・写真:WIMA日本支部及びTrui Hanoulle
http://www.wima.gr.jp/(WIMA日本支部)
http://www.wimaworld.com/(WIMAインターナショナル)
https://truihanoulle.be/move-she-does/(トゥルイ·ハヌレMove She Does)
WIMAって?
Women’s International Motorcycle Association(国際女性ライダー連盟)を略してWIMA(ウィマ)と呼ばれ、バイクを長く楽しみながら、世界中の女性ライダーが交流を深め、ともに成長していこうという女性の集まりで、1950年から国際交流活動を続けています。本部はとくに設けず、WIMAインターナショナルのホームページを中心にインターネットを通じて加盟支部がつながっており、現在の支部は39ヶ国にあります。
WIMA日本支部もあります!
国内活動として、春と秋に日本支部会員の1泊ミーティングを開催しており、春は総会を兼ねています。ミーティングは現地集合現地解散で、これは以下にお伝えする国際ミーティングと同じ方式です。そのほかには、ライダーによる清掃活動である“ラブ・ジ・アース・ミーティング”に社会貢献活動として参加したり、広報活動としてさまざまなバイクイベントにブース出展したりしています。会員が企画する各種イベントもあります。また、海外支部の会員が日本を訪れる際には、食事会の開催や宿泊の提供をしています。会員は国内各地にいるため、これらに関する情報交換や連絡には、メーリングリストやSNSを利用しています。
インターナショナルラリー(国際ミーティング)
WIMAではインターナショナルラリーと呼ばれる国際ミーティングが年に1回開催されます。このミーティングは、加盟支部が持ち回りでホスト国となり、約1週間、会場で一緒に滞在しながらツーリング、ゲーム、パーティを企画し、世界中のメンバーが一堂に会して交流を楽しむものです。約1週間の宿泊とパーティを含む参加費は各ホスト国の努力で毎年3万円前後に抑えられています。
世界各国の女性ライダーがフランスで集う
昨年、2023年のWIMAインターナショナルラリーは、フレンチアルプスで7月3日~7月7日にかけて開催されました。第74回となるそのラリーでは、世界各国から230名を超えるメンバーが集まり、ウェルカム/フェアウェルパーティー、パレード、ツーリング、そのほか開催国独自のイベントを一緒に楽しみました。
日本から参加するにはどうするの?
申し込みは半年以上前に始まります。ラリーに参加する場合、航空券、レンタルバイク、ルートの検討など、各自で準備を始めます。最初はわからないことだらけですが、WIMAでは、メンバーに質問したり相談したりすることができます。この時、筆者はイギリスから出発し、フランスを縦断してきました。
いざ、フレンチアルプスへ!
開催地はフランス南部のアルプス山脈。イギリスを出発し、フェリーでドーバー海峡を渡り南下する約1,400kmの旅です。フェリーでは、至れり尽くせりの日本とは違い、自分でバイクを固定しなければなりません。ほかのライダーのようすを見ながら奮闘していると、やり方を教えてくれました。フランスに入ると左側通行から右側通行に変わります。これだけは間違えると事故につながるため、つねに意識しておく必要があります。開催地まで2泊3日のルートは大まかに決めていましたが、寄り道したくなるのがライダーのつね。一般道を利用して、シャンパーニュ地方ではブドウ畑に圧倒されながら、小さな町や村を抜けて、バイクを走らせました。ルートの前半は直線道路が多く、北海道の“天に続く道”や“ジェットコースターの路”の長距離バージョンという感じ、中盤は国立公園内のなだらかなカーブが続き、リズムよく楽しめる道、最後はアルプス山脈がドーンと現れ、ヘアピンカーブが連続するアルプスを登っていくという、フルコースでした。アルプス山脈が目前に迫ってきたときには、ヘルメットの中で「すごーい!」「アメージング!」など、ありとあらゆる感動の言葉が口から出てきました。
ラリーのスタート!ウクライナからもメンバーが参加
夕方、会場に到着すると、4年ぶりに会う懐かしい友人の顔があちこちに。夜のウェルカムパーティーでは、長距離の走行でオシリが痛いのは私だけではないようで、疲れているにもかかわらず、イスに座るよりも立っていたいというメンバーもいました。ラリーにはウクライナ支部からアレーナとイリーナの2人も参加しました。2,600kmを走ってきたアレーナは普段キーウの地下に身を潜めて生活しています。今回の参加は日常になった戦争から一息つくため、そしてWIMAメンバーの支援に感謝の気持ちを伝えるために来たといいます。彼女からもらったステッカーには“In God we believe. In WIMA we trust!!!(神を信じ、WIMAを信頼する!!!)”と書かれていました。ラリー期間中は、フランス支部のメンバーのお勧めルートのツーリングに出かける人もいれば、会場でのんびりすごす人もいます。私は、近場のツーリング、蒸留所見学、全員でのパレードのほか、世界のツーリングやチャリティー活動などをテーマとした、いくつかのプレゼンテーションに参加しました。
イランの勇敢な女性たち
プレゼンテーションの一つは、中東各国を何度もバイクで訪問しているベルギー人の写真家、執筆家、教師、グラフィックデザイナー、ライダーなど、さまざまな肩書を持つトゥルイによるイランについてのお話でした。トゥルイは、これまでに出会った“男性優位の社会における女性ライダー”について、執筆や講演活動をしています。今回は、彼女の友人でもあるイランの女性たちの話を紹介してくれました。イランでは女性は“ヒジャブ”と呼ばれる布で頭や身体をおおうことが義務付けられています。また、女性が免許を取得することは法律で禁止されています。そんな中で人としての権利を手に入れるために行動する勇敢な女性たちに彼女は出会ってきました。ライダー、スタントライダー兼バイクインストラクター、サイクリンググループ、サーファー、長距離バス運転手、トラック運転手、タクシー運転手などです。彼女たちの実情を知ってもらいたいと、ベルギーの雑誌や新聞にインタビュー記事を掲載してきました。しかし、2022年9月にヒジャブの着用の仕方が不適切だとして警察に逮捕された女性が、その3日後に急死した事件をキッカケに、大規模な抗議デモへと発展しました。結局、多くのデモ参加者が逮捕され、死刑判決にいたるケースが相次ぎ、デモは鎮静化してしまいました。その間も、トゥルイは女性たちと連絡を取り続け、このような状況下で記事を公開してよいかと尋ねましたが、女性たちは一様に「こんな状況だからこそ公開してほしい」と答えました。全国版の新聞にも執筆したトゥルイは、もうイランに戻ることができないかもしれないといいます。WIMAのメンバーたちは、このプレゼンテーションに涙をこらえながら聞き入っていました。私自身も、バイクを楽しめることがなんとありがたいことなのかと改めて感じました。
2024年はルーマニアとオーストラリアの2回開催
ラリーでは、刺激的で心を動かされる女性ライダーたちに出会うことができます。新旧の友人たちとすごした5日間は、瞬く間にすぎ、それぞれに帰路につきます。仕事があるため真っ直ぐに家を目指す人、キャンプをしながら家までの旅を楽しむ人とさまざまですが、私は、往路とは別のルートで2泊3日のツーリングを楽しみました。全日程が晴れという幸運に恵まれ無事に旅を終えました。
今年、2024年に開催されるルーマニアとオーストラリアで開催されるラリーが楽しみです。今回のラリーのホストであるWIMAフランス支部、とくにリーダーのヴィオレッテに感謝を表します。