HONDA GB350

インプレッション

メーカーイチオシ！バイクセレクション 2023

HONDA, 126㏄〜400㏄

心地いいエンジン音を身体に響かせストレスから解放されよう

上品でクラシカル、おしゃれなスタイルのGB350。イマドキの軽量・軽快なスポーツバイクとはちょっと違う。しかし、そのルックスとは裏腹に、中身は最新の走り心地。ちゃんと走りを楽しめる、快活なスポーツバイクです。

HONDA広報さんのオススメポイント

二輪車らしいトラディショナルなデザイン。シンプルでありながら存在感の際立つスタイリングは、幅広いシチュエーションにマッチします。
GB350用に新規開発された空冷・単気筒エンジン。一回ごとの燃焼を感じられるようなクリアな鼓動感による心地よさを感じていただけます。
ゆったりとした乗り心地を提供する車体パッケージ。ライダーとバイクの一体感を見すえたライディングポジションなど、ゆったりとした操縦フィールを追求しています。

HONDA GB350のスタイリング

スポーティな走りも楽しめるおしゃれクラシカルなバイク

GB350に試乗するのは1年半ぶりくらいになるかな。久しぶりというほどではないのだけど、なんだか懐かしい感覚がよみがえってきた…。のんびり回るミドルシングルエンジンに、やさしい乗り心地とか、気ラクなライディングポジションとか…それらがかもし出す大らかさ、それが心地いい。GBは今となってはめずらしい、こういった走りの個性を魅力としているバイクなんです。でも、そんな乗らなきゃわからないような魅力だけがウリではありません。何しろ、GBはデビューしたとたんに半年以上納車待ちになったほどなんだから。何がそんなに魅力的なんでしょう。

まずは、このほどよいクラシカルさをただよわせたルックス。どう見たって肩ヒジ張って強がったりはしていません。今でも新鮮なネオレトロなスタイルなんだけど、それだけにデザインがシンプルで、レザー調のサイドバッグとか、うまくアレンジしたらもっと趣が…なんて、自分だけのオリジナリティをほどこしたカスタム車としての夢がいくらでも広がりそうな姿をしています。いってみれば、エンジンも車体も足まわりもオーソドックスな作りをしているわけです。その分カスタムもできるし、何より自分がそれに合わせてまとうライディングウエアの選択肢も膨大です。野暮ったい、いかにもバイク乗りでございますっ！　みたいなウエアでなはく、街におしゃれに溶け込むようなジャケットなんかも合いそうじゃない？　女子たるもの、ただバイクを見るのでなく、それに関わる自分の世界とのフィッティングも考えてバイクを見たいですよね。…書いてる本人が一番見てないかもだけどね。

GBはシンプルな構造というのもあるだろうけど、プライスはスタンダードタイプで55万円ほど。少し装飾を加えた“S”でも60万円弱です。これはCB250Rと同じくらいで、ちょっと上等なCBR250RRと比べるとはるかにお手ごろです。もちろん400クラスの中ではもっとも安いプライスレベルになります。趣味の乗り物だから、安ければいい、ということはないけれど、これもヒットする要素でしょう。

だからといってGBの見た目に安っぽさはありません。存在感のあるシングルエンジンはそのカタチもまとまっていて高級感があります。フィンにはきれいなエッジ加工がされているし、黒いコーティングもしかりです。クラシカルとはいえ、機能パーツは現代的です。メーター類は上品なデジタル式で、おしゃれで見やすく、ヘッドライトはLED。明るく前方を照らしてくれます。

20㎰の中にはゆとりが隠れている

最初に感じた“大らかさ”だけど、要因は特徴的なシングルエンシンのフィーリングかな。まず、エンジンの応答がとにかくやさしい。やさしいといっても、頼りないとかダルい感じではありません。ラフに扱ってもガツンっとしたショックはなく、だけどしっかり意思どおりのパワーを立ち上がらせてくれます。どこでも気ラクに操れるんだけど、それにともなって、ちゃんと楽しい反応がついてきます。それも、日常域で普通に走ってる時にも楽しめるのです。

GBは、街中を走る際に使う低めのエンジン回転の時は、歯切れのいい排気音を響かせながら動き回ります。ハンドルやタンクに伝わる振動と一緒になった鼓動感ではなく、深みのあるダンッダンッという音に合わせて加速の揺れが車体に伝わってくるのです。今時のバイクにしてはいい音です。もちろんハーレーのような、大排気量のVツインエンジンが発する重厚で炸裂するような迫力はありません。ずっと爽やかなんだけど、音圧はしっかりしているから、アピールはかなり強力です。

このエンジンは極低回転域からトルクがあるし、けっこう粘ってくれます。のんびり走るのにもってこいのエンジンなんです。普通に、急加速とかはせず街中を走っているだけで、やさしいパルスがスロットルに合わせて強弱することになります。実際の加速力など、力とのバランスもちょうどいい感じなんです。単純なことだけど、これを実感しながら走ることがなかなか楽しいんだな。

そんなエンジンなんだけど、高速道路を走るような速度域になるとフィーリングが変わってきます。鼓動感は消え、排気音も連続音で、ものすごくなめらか。振動や音でのストレスなんて無縁みたい。ちゃんとイマドキな、スムーズな走りをしてくれます。なんとも実用的なバイクだと思わない？　400クラスだけど、CB400SFみたいな力強さはありません。250クラスと比べても、力強そうに思えない最高出力20㎰というスペックです。

でも250プラス100㏄の排気量が生み出すゆとりは絶大。速くはないんだけど、追い越しをかける時などちょっとした加速が必要な場面など、シフトダウンしなくても、そして250ほどエンジンを回さなくても、アクセルを開けるだけでグイグイ加速します。この気ラクさこそゆとりの威力なんです。排気量なりのパワーはあると思って大丈夫。峠道で並列4気筒の400㏄モデルを追いかけ回そうなどと思わなければ、GBのパワーは十分。日常域で使いやすいほどよいパワーです。

好き嫌いはあるけれどとっても器用なんです

車体はスリムで華奢に見えるかもしれないけど、高速域でも節度のある安定感を生んでくれます。乗り心地だって悪くありません。イスに座ってるようなラクチンなライディングポジションで疲れ知らず。空いた田舎道なんかをトコトコ走っていると、どこまでも走っていきたくなるかもね。GBはそんなバイク。街中をコミューターとしてだけ使うにはもったいない感触です。

ただし、高速域でも…というかエンジンを高回転域まで回しても意外に振動が少ない、とはいったものの、並列4気筒やツインの400たちに比べればメカノイズなど、足元から伝わる音はずっと騒々しくなります。それに、カウルやスクリーンといったモノがないので、長時間の高速走行となると風圧との戦いも待っています。これも戦いに慣れてないとストレスになるかもしれないね。GBにはGBなりのペースがあって、それを越えた走りはかなり興ざめです。アベレージスピードの高いライダーたちとのツーリングはあまり楽しくはないでしょう。

とはいっても誤解してはいけません。ちゃんと万能性はあります。たとえば、ツーリング途中で現れた峠道など、楽しそうな道を指をくわえて通り過ぎなくていいのです。スポーツするのが苦手ではないんです。250㏄スポーツのような軽快さはないけれど、身軽で、街中での切り返し、峠道のコーナリングなんかもクセがなく素直です。これらはツーリングで重宝することだけど、山道を走る時には安心できる扱いやすさを生んでくれます。さすがに手練が操るスーパースポーツモデルなんかと同じペースを楽しく…なんてのはムリですが…。

それでも、バイクのコントロールを楽しみながらかけ足で峠道を駆け抜けることには応えてくれます。クルーザーみたいに、車体のどこかがすぐに接地して怖いとか、ブレーキが甘いとかは感じません。足まわりもそれなりに落ち着いていてスポーティな動きに耐えてくれます。GBはおしゃれなだけのネオクラシック・ストリートコミューターではないということです。楽しいスピードレンジはストリートから郊外をツーリングするようなのんびりとしたペース。峠道では目を三角にしない程度の駆け足スポーツといったところ。街中からツーリングまで、ムリをせずに普通に使い切れます。それに、冒頭で書いた、走っているだけ感じる大らかな走行フィーリングも付いてきます。これがならではの魅力といえます。

いきなり購入を決めるのは不安だという人は、Honda GOバイクレンタルにて、東北エリアから九州・沖縄(※)エリアまで多くの店舗で借りることができるので、そこで乗り味を試してみるといいかもしれません。試乗したらきっとほしくなると思いますよ。

※沖縄は現在“S”タイプのみレンタル可